かおするーむへようこそ

口語、語調不揃い、雑多、グチグチ…etcご容赦いただける方はようこそ…

『真夜中の闇打ち際』

深夜1時だった。

私は目を疑った。

ほんの一瞬だったはずだ。

部屋を見渡し、よく確認しても、

つい今しがたまで居たはずの部屋の景色が違う。

何が起こったのかわからず大変混乱した。

 

実家だ…ここは実家だ。自宅に居たつもりだったのに、

生霊でも飛ばしたか…

 

深い夜、闇に触れた日のことを思い出す

 

実家に帰省したとき、あ…闇だ、と感知できたことがあった

幼いころはしょっちゅう感じていた、あの感覚

成人してから何年も経った今現在の自分がいまだに持ち得たということが

何が無くともただ嬉しくて

恐れ、畏怖、そんな感覚はいつの間にやら消え失せていて

少し物悲しいような、小さな喪失感があったものだが、

まだ忘れていないのだ、ちゃんと感知できるのだと、

ほんの少しだけ誇らしかった

波打ち際で波の寄せては返すをはしゃぐのとは

全然違うのだけれども

闇も這い寄ってくるとさあっと引いていく

闇を肌で感じて、指先に触れて、あ、闇だ、と

そっと喜ぶと、闇は逃げて行ってしまう

闇を捕まえてみよう

多分それは、子供には容易いことなのだ

夜トイレにひとりで向かうとき、

便所の個室の電気がいつ消えるとも知れないと

杞憂ばかりが脳内を駆け巡る

焦る、震える、急ぐ

電気は消えるはずもないのに、せかせかと用を足す

慌てて寝巻きを直してトイレを出るときに

電灯を自分で消すのが躊躇われるのは

ほの暗く明かりの燈るだけの、心細い廊下へと

闇の待つこの廊下へと

足を踏み出す勇気が湧いてこないからだ

 

時計を見た。

丑三つ時という時間帯

一瞬、脳が認識のバグを起こし、

カラダの感覚までも実家へ誘ったのだろう。

 

ただそれだけの取るに足らない、真夜中の出来事。